イングランドの国内カップ戦であるFAカップは各国で行われるカップ戦の中でも最もステータスが高く、歴史がある大会です。
近年では、チャンピオンズリーグなどの盛り上がりによってFAカップの価値が薄れているという声もありますが、FAに所属するすべてのチームが参加できる大会はこのFAカップのみ。
そのため、下部リーグの選手でさえも「世界屈指の大会で頂点に立つ」という夢を実現可能なのです。
このページでは、世界最古のフットボールイベントであるFAカップをより楽しめるように、大会方式の解説や過去のデータなどを掲載します。
目次
FAカップとは?
FAカップは1871年からイングランドで行われているフットボールにおける世界最古のカップ戦です。
FAという文字は”The Football Association”(サッカー協会)の頭文字を取ったものです。
世界で最も歴史がある大会として、多くの国がこのFAカップをモデルに国内大会を創設しました。
日本の天皇杯もFAカップをモデルに作られていますね。
なお、FAカップの優勝賞金は1,800,000ポンド(約2億6865万円)です。
最大の魅力はプロ・アマすべてに参加資格があること
プレミアリーグのクラブがすべて参加するのはもちろんですが、FAカップの最大の魅力は、イングランドサッカー協会(FA)に登録されているすべてのクラブに参加資格があることです。
さらに、一発勝負(引き分けの場合は再試合)なので、下部リーグのクラブが上位リーグのクラブを破る”ジャイアント・キリング”(大物食い)が起こりやすいのが魅力です。
2012-13シーズンには、現在イングランド3部のフットボールリーグ1に所属するウィガン・アスレティックが強豪マンチェスター・シティを1-0で下し優勝するという事態も起きています。
2016-17シーズンにはアマチュアクラブが大躍進
2016-17シーズンにジャイアント・キリングを続けてベスト16まで勝ち進んだのが5部リーグに所属する「サットン・ユナイテッド」です。
5部以下のリーグをノンリーグと呼びますが、ノンリーグのクラブがベスト16に残るのは1920年以来の快挙。
サットン・ユナイテッドのポール・ドスウェル監督は、不動産会社の経営者で、監督としてはこれまで無給で働きながらチームに最大で週2000ポンド(約28万円)の融資を提供してきました。
ベスト16でのアーセナル戦では0-2で敗れてしまいベスト8進出とはなりませんでしたが、弱小クラブの快進撃に賛辞の言葉が相次ぎました。
一方、このアーセナル戦でもう一つ注目されたのが45歳で115kgの巨漢GK「ウェイン・ショー」です。
第2ゴールキーパーとしてベンチスタートだったショーは、試合終盤に交代枠が全て使い切られると、なんと試合中にもかかわらずステーキパイを頬張り始めたのです。
当初は食いしん坊として面白おかしく取り上げられていたのですが、「ウェイン・ショーが試合中にパイを食べる姿がテレビカメラに捉えられるか」が、この日のスポンサーにもなっていたSUN・Betによって賭けの対象になっていたことが発覚。
賭博に関する違反がなかったか調査されることになり、後日ウェイン・ショーの退団(解雇)が正式に発表されました。
サットン・ユナイテッドの歴史的な大躍進に水を差す残念な結果になり、ある意味「黒歴史」として語り継がれることでしょう。
大会方式の解説
前述しましたが、FA杯にはプロ・アマ関係なくイングランドフットボール協会に所属するすべてのクラブが参加可能。
ホーム・アウェイ方式ではなく、抽選でどちらのホームで試合をするか決定し、その後一発勝負で勝者を決めます。
引き分けだった場合、相手クラブのホームで再試合(リプレイ)を行いますが、第二戦目でも引き分けた場合、延長戦・PK戦を行い勝者を決定します。
以前は決着が着くまで何度も再試合を行ってきましたが、試合数増加による選手のコンディション低下、下部クラブにとっては遠征費がかかることなどが考慮され、現在の大会方式に至っています。
しかし、他のリーグ戦やEFLカップといった大会と並行したスケジュールで行われるため、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場するビッグクラブからは過密日程の原因の1つであると指摘されています。
予選
予選にはイングランド5部~10部のクラブが参加します。
予備予選1回戦・2回戦、予選1回戦~4回戦の合計6回戦で、勝利した32クラブが本戦出場の権利を得ます。
本戦1回戦
1回戦は、リーグ1(3部)の24クラブ、リーグ2(4部)の24クラブに加え、予選を勝ち上がった32クラブが参加します。
勝利した40クラブが次のラウンドへ。
本戦2回戦
2回戦では、1回戦に勝利した40クラブが参加します。勝利した20クラブが次のラウンドへ。
本戦3回戦
このラウンドからようやくプレミアリーグ(1部)の20クラブとチャンピオンシップ(2部)の24クラブが参戦します。
本戦2回戦を勝ち上がった20クラブとの合計64クラブが戦い、勝利した32クラブが本戦4回戦へ進出。
本戦4回戦
本戦3回戦を勝ち上がった32クラブが対決します。
勝利した16クラブは次のラウンドへ。
本戦5回戦
本戦4回戦を勝ち上がった16クラブが対決します。
勝利した8クラブは準々決勝へ。
準々決勝
本戦5回戦を勝ち上がった8クラブが対決します。
準々決勝での再試合は2016-17シーズンから廃止になり、準々決勝以降では、リプレイを行わずに延長・PK戦を行う一発勝負です。
勝利した4チームは次のラウンドへ。
準決勝・決勝
準決勝以降の試合は、すべて中立地で行われます。
以前はバーミンガムのヴィラ・パーク、シェフィールドのヒルズボロなどで試合を行っていましたが、2007-08シーズン以降はロンドンのウェンブリー・スタジアムが会場になりました。
優勝したクラブには次シーズンのUEFAヨーロッパリーグ出場権が与えられます。
過去10シーズンの決勝カード
- [2007-08] ポーツマス 1-0 カーディフ・シティ
- [2008-09] チェルシー 2-1 エヴァートン
- [2009-10] チェルシー 1-0 ポーツマス
- [2010-11] マンチェスター・シティ 1-0 ストーク
- [2011-12] チェルシー 2-1 リヴァプール
- [2012-13] ウィガン・アスレティック 1-0 マンチェスター・シティ
- [2013-14] アーセナル 3-2 ハル・シティ
- [2014-15] アーセナル 4-0 アストン・ヴィラ
- [2015-16] マンチェスター・ユナイテッド 2-1 クリスタル・パレス
- [2016-17] アーセナル 2-1 チェルシー
- [2017-18] チェルシー 1-0 マンチェスター・ユナイテッド
クラブ別優勝回数ランキング
クラブ名 | 優勝回数 | 準優勝回数 |
アーセナル | 13 | 7 |
マンチェスター・ユナイテッド | 12 | 8 |
チェルシー | 8 | 5 |
トッテナム | 8 | 1 |
リヴァプール | 7 | 7 |
アストン・ヴィラ | 7 | 4 |
歴代得点王
シーズン | 選手名 | 得点数 |
2012-13 | カルロス・テベス | 5 |
2013-14 | セルヒオ・アグエロ | 4 |
マティ・フライヤット | 4 | |
クリス・ポーター | 4 | |
2014-15 | サイド・ベラヒーノ | 5 |
ジョナサン・ステッド | 5 | |
ポール・ギャラガー | 5 | |
2015-16 | マチェイ・ヴィドラ | 6 |
2016-17 | ソン・フンミン | 6 |
アダム・モーガン | 6 | |
2017-18 | ウィル・グリッグ | 7 |
[2017-18]得点ランキング
※ 各選手の所属クラブは2017-18シーズン時点のもの。
順位 | ゴール数 | 選手名 | 所属 |
1 | 7 | ウィル・グリッグ | ウィガン |
2 | 6 | イアン・ヘンダーソン | ロッチデール |
3 | 5 | ロメル・ルカク | マンチェスター・ユナイテッド |
5 | ジャック・マリオット | ピーターボロ・ユナイテッド | |
5 | ジェイデン・ストックリー | エクセター・シティ |
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契約期間 | スポンサー | 大会名称 |
1871-94 | なし | The FA Cup |
1994-98 | Littlewoods Pools | The FA Cup sponsored by Littlewoods |
1998-02 | AXA | The AXA-Sponsored FA Cup |
2002-06 | なし | The FA Cup |
2006-11 | E.ON | The FA Cup sponsored by E.ON |
2011-14 | Budweiser | The FA Cup with Budweiser |
2014-15 | なし | The FA Cup |
2015-21 | Emirates | The Emirates FA Cup |