イングランドのカップ戦といえば、世界最古の歴史がある「FAカップ」ですが、「EFLカップ」という、もう一つのカップ戦が行われているのをご存知でしょうか?
現在、EFLカップはスポンサーであるタイのエナジードリンクを販売している企業「カラバオ」の名を冠に着け、「カラバオカップ」と呼ばれていますね。
このページでは、イングランドで行われているもう一つのカップ戦「EFLカップ」をより楽しめるように、大会方式の解説や過去のデータなどを掲載します。
目次
EFLカップとは?
EFLカップは1960年からイングランドで行われているカップ戦です。
EFLという文字は”English Football League”の頭文字を取ったものです。
大会主催は「イングリッシュ・フットボールリーグ」で、フットボールリーグ(イングランド2部~4部)のクラブに、プレミアリーグに所属する全クラブを合わせた92クラブが参加資格を持ちます。
そのため、プレミアリーグを含めた4部以上のすべてのクラブがEFLカップに出場することとなります。
FAカップとの違い
EFLカップをもう一つの国内カップ戦であるFAカップと比較してみると、以下のようになります。
EFLカップ | FAカップ | |
創設 | 1960年 | 1871年 |
主催 | イングリッシュ・フットボールリーグ(EFL) | イングランドサッカー協会(FA) |
参加資格 | リーグ2(4部)以上 | FAに登録してあるすべてのクラブ |
参加クラブ数 | 92 | 736 |
優勝特典 | ヨーロッパリーグ出場権 | ヨーロッパリーグ出場権 |
賞金 | 約1492万円 | 約2億6865万円 |
FAカップとの最大の違いは参加資格の違いです。
上記のようにEFLカップはリーグ2(イングランド4部)以上のクラブしか参加資格を持ちません。
一方、FAカップはプレミアリーグの全クラブをはじめ、イングランドサッカー協会(FA)に登録されているすべてのクラブに参加資格があるため、5部から下のクラブも参加が可能です。
どちらの大会も優勝チームにはUEFAヨーロッパリーグの出場権を与えられるので、興行面でも大きな意味を持つ大会ですね。
しかし、最古の大会で優勝が名誉とされるFAカップに比べると、EFLカップは歴史も浅く優勝賞金も低いため、各クラブの本気度で言えばFAカップの方が断然上と言えるでしょう。
EFLカップは他のリーグ戦やFAカップといった大会と並行したスケジュールで行われるため、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグに出場するビッグクラブは特にEFLカップを軽視する傾向があり、サブを中心とした布陣で試合を行うことが多々あります。
EFLカップは不要なのか?監督たちのコメントから考える
FAカップとEFLカップの2つの大会があることで過密日程となり、それがプレミア勢のチャンピオンズリーグでの躍進を妨げているという論争が巻き起こっています。
マンチェスター・ユナイテッドのモウリーニョ監督は、英国メディアBBCのインタビューで、「この大会がなくてもイングランドのサッカーは生き残るか、あるいはより良くなるかと聞かれたら、答えはイエスだろう。欧州の大会で、よりフレッシュでいられるはずだ」と答え、EFLカップへの不満を露わにしています。
マンチェスター・シティのグアルディオラ監督も「勝つことができれば良い賞だが、体力の消耗でもある」と答え、さらに「このタイトルは優勝しても人々に功績を称えられる大会じゃない」と付け加えており、やはりビッグクラブとしては悩みの種であり、廃止すべきという意向があるようです。
一方で、英紙『テレグラフ』ではストーク・シティの指揮官マーク・ヒューズが『中堅クラブにとっては、トロフィーを勝ち取るチャンスなんだ。それはとても重要なことだ』と発言しており、ビッグクラブ以外にとっては重要な大会であると強調しています。
過密日程の中でコンディション調整をしなければならないビッグクラブと、トロフィー獲得を狙う中堅・下位クラブ。
どちらの主張も理解できるもので、この論争は平行線を辿りそうです。
個人的には、ビッグクラブは「EFLカップは若手を使う場」と割り切るのが良いと思っています。
普段出場しない選手を起用することで、若手はチャンスを得ることができますし、指揮官は選手層の厚さを再確認できるメリットがあるでしょう。
不甲斐ない試合をすればメディアに叩かれてしまいますが、選手を休めた結果として他大会で良い結果を残せるならEFLカップは重視しなくていいというのが個人的な考えです。
また、U-23の選手を何人か起用しなければならないといった施策をしてみても面白いですね。
こういった論争が続いているので、近いうちにEFLカップの大規模なルール変更や廃止といった改革が起こるかもしれません。
大会方式の解説
前述しましたが、EFLカップにはリーグ2(4部)以上のクラブが参加可能で、合計92チームが参加します。
ノックアウト・トーナメント方式の一発勝負(準決勝のみホーム&アウェイ)で行われるため、FAカップ同様にジャイアント・キリング(大物食い)が起きやすいのがEFLカップの魅力でもあります。
以前は引き分けだった場合に再試合(リプレイ)を行っていましたが、過密日程を避けるために廃止。
90分終了時に同点だった場合、15分ハーフの延長戦を行います。
それでも勝負が付かない場合はPK戦で次のラウンドに進むクラブを決定します。
1回戦
1回戦には、チャンピオンシップ(2部)の22クラブ、リーグ1(3部)の24クラブ、リーグ2(4部)の24クラブの合計70クラブが参加します。
勝利した35クラブが2回戦へ進出。
2回戦
2回戦では、1回戦に勝利した35クラブに加え、UEFAチャンピオンズリーグ・UEFAヨーロッパリーグの出場権を持たないプレミアリーグの13クラブ、チャンピオンジップ(2部)の2クラブの合計50クラブが参加します。
勝利した25クラブが3回戦へ進出。
3回戦
2回戦を勝ち上がった25クラブに加え、UEFAチャンピオンズリーグ・UEFAヨーロッパリーグの出場権を持つプレミアリーグの7クラブの合計32クラブが参加します。
勝利した16クラブが4回戦へ進出。
4回戦
本戦4回戦を勝ち上がった16クラブが対決します。
勝利した8クラブは次のラウンドへ。
準々決勝
4回戦を勝ち上がった8クラブが対決します。
勝利した4クラブは準決勝へ。
準決勝
準々決勝を勝ち上がった4クラブが対決します。
なお、準決勝のみホーム・アウェイ方式で行われます。
セカンドレグで90分終了時に、2試合の合計得点が同じ場合、アウェイゴールルールは採用せず延長戦を行います。
ただし、延長戦終了時に2試合の合計得点が同じ場合はアウェイゴールルールを適用。
アウェイゴール数も同じ場合はPK戦を行い、決勝に進むクラブを決めます。
決勝
決勝戦は伝統的にはロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われています。
優勝クラブには次シーズンのUEFAヨーロッパリーグ出場権が与えられます。
過去10シーズンの決勝カード
- [2008-09] マンチェスター・ユナイテッド 0-0(PK4-1) トッテナム
- [2009-10] マンチェスター・ユナイテッド 2-1 アストン・ヴィラ
- [2010-11] バーミンガム・シティ 2-1 アーセナル
- [2011-12] リヴァプール 2-2(PK 3-2) カーディフ・シティ
- [2012-13] スウォンジー・シティ 5-0 ブラッドフォード・シティ
- [2013-14] マンチェスター・シティ 3-2 サンダーランド
- [2014-15] チェルシー 2-0 トッテナム
- [2015-16] マンチェスター・シティ 1-1(PK3-1) リヴァプール
- [2016-17] マンチェスター・ユナイテッド 3-2 サウサンプトン
- [2017-18] アーセナル 0-3 マンチェスター・シティ
クラブ別優勝回数ランキング
クラブ名 | 優勝回数 | 準優勝回数 |
リヴァプール | 8 | 4 |
マンチェスター・ユナイテッド | 5 | 4 |
アストン・ヴィラ | 5 | 3 |
チェルシー | 5 | 3 |
マンチェスター・シティ | 5 | 1 |
トッテナム | 4 | 4 |
ノッティンガム・フォレスト | 4 | 2 |
レスター・シティ | 3 | 2 |
アーセナル | 2 | 6 |
ノリッジ・シティ | 2 | 2 |
バーミンガム・シティ | 2 | 1 |
ウルヴァ−ハンプトン | 2 | 0 |
ウェスト・ブロムウィッチ | 1 | 2 |
ミドルズブラ | 1 | 2 |
QPR | 1 | 1 |
リーズ・ユナイテッド | 1 | 1 |
ストーク・シティ | 1 | 1 |
ルートン・タウン | 1 | 1 |
シェフィールド・ウェンズデイ | 1 | 1 |
スウィンドン・タウン | 1 | 0 |
オックスフォード・ユナイテッド | 1 | 0 |
ブラックバーン | 1 | 0 |
スウォンジー・シティ | 1 | 0 |
歴代得点王
シーズン | 選手名 | 得点数 |
2012-13 | クリスティアン・ベンテケ | 4 |
アンドレアス・ヴァイマン | 4 | |
2013-14 | アルバロ・ネグレド | 6 |
エディン・ジェコ | 6 | |
2014-15 | ベニク・アフォベ | 6 |
2015-16 | ケヴィン・デ・ブルイネ | 5 |
2016-17 | ダニエル・スタリッジ | 4 |
ズラタン・イブラヒモビッチ | 4 |