プレミアリーグのクラブはなぜチャンピオンズリーグで勝てなくなったのか?

2016-17シーズンのチャンピオンズリーグを振り返ってみると、アーセナルとマンチェスター・シティがベスト16で敗退し、ベスト8に進出したのは2015-16シーズンのプレミア王者であるレスターのみでした。

近年のチャンピオンズリーグではスペインやドイツ勢の活躍が目立ち、プレミアリーグのクラブを準決勝や決勝で見ることはめっきり無くなってしまったように感じます。

果たして、プレミアリーグに所属しているクラブが勝てなくなったのはいつからなのでしょうか?

そして、その原因はどこにあるのでしょうか?

今回の記事では、近年の成績を見ながら、プレミアリーグのクラブが欧州の舞台で勝てない理由を考えていきたいと思います。

近年のチャンピオンズリーグにおけるプレミア勢の成績

まずは、過去10年間のチャンピオンズリーグにおける、プレミア勢の成績を見ていきましょう。

ベスト8以上に残ったチームをピックアップしてみます。

2016-17 レスター・シティ(ベスト8)
2015-16 マンチェスター・シティ(ベスト4)
2014-15 なし
2013-14 チェルシー(ベスト4)、マンチェスター・ユナイテッド(ベスト8)
2012-13 なし
2011-12 チェルシー(優勝)
2010-11 マンチェスター・ユナイテッド(準優勝)、トッテナム、チェルシー(ともにベスト8)
2009-10 マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル(ともにベスト8)
2008-09 マンチェスター・ユナイテッド(準優勝)、アーセナル、チェルシー(ともにベスト4)、リヴァプール(ベスト8)
2007-08 マンチェスター・ユナイテッド(優勝)、チェルシー(準優勝)、リヴァプール(ベスト4)、アーセナル(ベスト8)

こうして一覧にしてみると、過去のプレミア勢の強さ、そして近年の低迷がよく分かりますね。

以前はベスト8に3チーム程は進出していたものの、2011-12シーズン以降はなかなか上位進出できていません。

2011-12シーズンのチャンピオンズリーグではチェルシーが優勝しましたが、マンチェスター・シティとマンチェスター・ユナイテッドはグループステージ敗退。アーセナルはベスト16敗退と、このシーズンからプレミア勢の不調が始まったように感じます。

決勝の「チェルシーvsバイエルン」の試合はリアルタイムで観戦していましたが、チェルシーは守備固めからカウンターを狙うサッカーを展開しており、史上最も退屈な決勝という声も挙がっていました。

また、このシーズンのチェルシーはプレミアリーグを6位で終えていたため、この結果は番狂わせとも言われ、プレミア勢の期待値が低かったことが伺えます。

なぜ、プレミア勢はチャンピオンズリーグで勝てなくなったか

なぜ、プレミア勢がチャンピオンズリーグで勝てなくなったかというのには、さまざまな見解がありますが、僕は以下の3点が主な原因だと考えています。

  • リーグ内での競争激化
  • 欧州クラブの資本充実
  • 過密日程による故障者の増加

それぞれ見ていきましょう。

プレミアリーグ内での競争激化

かつてはマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リヴァプール、チェルシーの4クラブが”ビッグ4″と呼ばれていましたが、近年ではこの4チームに、トッテナムとマンチェスター・シティの2チームを加えて”ビッグ6″と呼ぶようになりましたね。

実際、マンチェスター・シティは2011-12シーズンにプレミア制覇を果たしていますし、トッテナムは2015-16シーズンにプレミア3位、2016-17シーズンは2位と優勝争いを繰り広げています。

優勝候補が6チームいる中で、チャンピオンズリーグ出場権である4枠を争わなければいけないので、リーグ内での競争はとても激しいものといえます。

リーグ内での競争が激化したからこそ、クラブはプレミアリーグで上位を狙い、チャンピオンズリーグの出場権確保を最優先に考えるようになりました。(プレミア内ではCL出場権確保=シーズン成功という風潮があるため)

ドイツのバイエルン・ミュンヘン、スペインのレアル・マドリードやバルセロナは、最早チャンピオンズリーグ出場は当たり前。

チャンピオンズリーグで優勝できなければ失敗のシーズンともみなされてしまうため、プレミア勢とは少し意気込みが違うかもしれませんね。

欧州クラブの資金充実

プレミアリーグ内の競争激化に拍車をかけるように、プレミアリーグの中小クラブに巨額の放映権料や、海外資本が入りました。

中小クラブの資金が潤沢になることによって、昇格クラブでさえも各国の代表クラスの選手を獲得することが可能に。

そういった理由からビッグクラブと中小クラブの差はどんどん縮まり、リーグの格下相手でもフルメンバーで戦わなければいけない状況となってしまいました。

また、フランスのモナコとパリ・サンジェルマンをはじめとした欧州各国のクラブに中東・中国・ロシアなどから資本投下がされるようになり、

チームの戦力が底上げ。今夏もパリ・サンジェルマンはバルセロナからFW「ネイマール」を獲得しましたね。

結果としてモナコやパリ・サンジェルマンは欧州を代表するビッグクラブへと成長を遂げました。(モナコは2016-17シーズンのCLでもベスト4に名を連ねました)

プレミアリーグのクラブにとって、かつては容易だったチャンピオンズリーグのグループステージ突破も危ういものになってしまいました。

過密日程による故障者の増加

スペイン・ドイツ・イタリアといった他の欧州主要リーグには、クリスマス前から年始までの休み「ウインターブレイク」(いわゆる冬休み)があります。

一方プレミアリーグでは、リーグ戦の他に2つのカップ戦(FAカップとEFLカップ)が同時進行で行われるために、このウインターブレイクがありません。

チャンピオンズリーグを戦っているチームは、プレミアリーグ、FAカップ、EFLカップ、チャンピオンズリーグと4つのコンペティションを戦わなければならないんですね。

時には中二日での試合もあったりしますので、選手の疲労も溜まり、シーズン終盤にかけては怪我人が多くなります。

こうしたシーズン日程もプレミア勢がチャンピオンズリーグで勝てない要因の一つでしょう。

まとめ

こうして見てみると、リーグ内での競争激化、欧州クラブへの資本投下、そして過密日程と、プレミア勢の低迷には様々な要因が重なったのがわかります。

ビッグマッチが多く「最も面白いリーグ」と呼ばれているプレミアリーグですが、それが原因で欧州の舞台で輝けないというのは本末転倒ですね。

プレミアリーグのクラブは資金が潤沢な分、外国籍の有望株を獲得しやすくなりましたが、一方で自国の選手の出場機会が減っているように感じます。

若手の出場機会が減り、MF「スティーヴン・ジェラード」やMF「デビット・ベッカム」のようなイングランド国籍でワールドクラスの選手が、最近では滅多に出てこなくなりましたね。

それに伴いイングランド代表の弱体化も深刻で、ワールドカップでも1990年以降一度もベスト4に入れていません。

イングランド代表の若手でプレミアを代表する選手となった、トッテナムFW「ハリー・ケイン」やマンチェスター・シティFW「ラヒーム・スターリング」がワールドクラスと呼ばれるには、チャンピオンズリーグやEUROといった欧州の舞台での活躍が求められます。

チャンピオンズリーグでのプレミア勢の復活、そしてイングランド代表の強化のためにも、プレミアリーグに改革が必要なのは間違いないでしょう。

プレミアリーグをどのように改革していくべきか?

まずは、過密日程を解消するための改革を行うべきです。

現在、イングランド国内のカップ戦である「FAカップ」では試合が引き分けに終わった場合、延長はなくホームとアウェーを入れ替えて後日再試合が行われています。(準決勝と決勝は除く)

FAカップは世界で最も歴史があるサッカーの大会なので、伝統を非常に大事にしており、以前のままの試合システムを採用しているんですね。

しかし現行システムでは引き分けが増えると試合数が多くなり、過密日程に拍車がかかります。

それが理由でプレミアリーグのクラブはFAカップではメンバーを落とすため、早々に敗退するという事態が起こっています。

伝統を大事にするがあまり、大会としての価値や質が下がるのはもったいないですよね。

過密日程を解消するためには、このFAカップの改革が第一だと僕は考えています。

また、チャンピオンズリーグで戦えるチームにするという意味では、イングランド代表選手を多く擁するチームがあっても良いと思います。

チャンピオンズリーグ上位の常連チームは、自国の代表クラスの選手が多いのが特徴です。

例えば、バルセロナやレアル・マドリードにはスペイン代表が非常に多く(バルサ:5名,レアル:6名)、バイエルンにはドイツ代表が7名も所属しています。

このように国籍を固めることで言語の問題も解決されますし、なおかつ代表ウィークでもコンビネーションの練習が可能です。


一方で、プレミアリーグで最多の人数はトッテナムの5名です。次点でマンチェスター・ユナイテッドが4名ですが、他クラブは1~2名がほとんど。

プレミアリーグのクラブがチャンピオンズリーグで勝てるようになるためには、自国の選手をもっと大事に育成していく必要があると僕は考えます。

クラブ生え抜きの選手などが多くいれば戦術も浸透しやすいですし、結果的にイングランド代表の選手層を厚くすることにもつながるでしょう。

今後、プレミアリーグが実際にどのような改革をしていくのか楽しみですね。