先日、FAカップの4回戦が行われました。
一発勝負のため、下部リーグ所属チームがビッグクラブを倒す”ジャイアント・キリング”が起こりやすいのがこのFAカップの特徴です。
前回のFAカップ3回戦ではプレミアビッグ6の一角であるアーセナルが敗戦してしまいました。
このラウンドでは、リーグ23節で首位のマンチェスター・シティを打ち負かしたリヴァプールがまさかの敗戦。
今回は、FAカップ4回戦の結果とリヴァプールの敗戦の理由・課題点について見ていきましょう。
目次
2017-18 FAカップ4回戦結果
シェフィールド・ウェンズデイ 3-1 レディング
ヨーヴィル・タウン 0-4 マンチェスター・ユナイテッド
ピーターバラ 1-5 レスター・シティ
ハル・シティ 2-1 ノッティンガム・フォレスト
イプスウィッチ・タウン 0-1 シェフィールド・ユナイテッド
サウサンプトン 1-0 ワトフォード
MKドンズ 0-1 コベントリー
ハダースフィールド 1-1(再試合) バーミンガム
ミドルズブラ 0-1 ブライトン
ミルウォール 2-2(再試合) ロッチデール
ノッツ・カウンティ 1-1(再試合) スウォンジー・シティ
シェフィールド・ユナイテッド 1-0 プレストン
ウィガン・アスレティック 2-0 ウェストハム
ニューポート 1-1(再試合) トッテナム
リヴァプール 2-3 ウェスト・ブロムウィッチ
チェルシー 3-0 ニューカッスル・ユナイテッド
カーディフ 0-2 マンチェスター・シティ
※ 再試合は2/7-8に開催
プレミアリーグの3クラブが大会から姿を消す
FAカップ4回戦では、プレミア上位のクラブが順当に駒を進める一方、リヴァプールがプレミア19位のウェスト・ブロムウィッチに不覚を取り敗戦。
リヴァプール、ニューカッスル、ウェストハムのプレミア3クラブが敗戦し、大会から姿を消しました。
また、トッテナム、ハダースフィールド、スウォンジーの3クラブも再試合にもつれ込んでいます。
大会名物であるジャイアント・キリングはこのラウンドでも起こり、ウェストハムはリーグ1(実質3部)で首位のウィガン・アスレティックに2-0で完敗。
トッテナムが引き分けたニューポートはリーグ2(実質4部)のクラブです。
リヴァプール vs ウェスト・ブロムウィッチ ハイライト動画
リヴァプールはプレミア20位、19位に連続で敗戦
プレミアリーグ第23節で首位のマンチェスター・シティを打ち破ったリヴァプールでしたが、24節では最下位のスウォンジーに敗戦。
さらに今回のFAカップ4回戦でも19位のウェスト・ブロムウィッチに敗戦と、サポーターの期待を大きく裏切る形となってしまいました。
しかもリヴァプールのホームのアンフィールドでの敗戦です。
この試合ではなにが原因でリヴァプールが崩れてしまったのでしょうか、失点のシーンを中心に見ていきましょう。
この試合はほとんどフルメンバーだった
DF「アルベルト・モレノ」が怪我から復帰した最終ラインには、左からDF「アルベルト・モレノ」と新加入のDF「ファン・ダイク」DF「ジョエル・マティプ」DF「アレクサンダー=アーノルド」が配されます。
中盤はドイツ代表MF「エムレ・ジャン」とMF「ワイナルドゥム」MF「アレックス・オックスレイド=チェンバレン」のトライアングル。
前線は左からFW「サディオ・マネ」FW「ロベルト・フィルミーノ」、FW「モハメド・サラー」とほとんどメンバーを落とさずにこの一戦に挑みました。
気になったのは守備陣の集中力の無さ
この試合で気になったのは、中盤と両サイドバックが軽い守備をしてしまっていることです。
6分の失点シーンでは、まずMFワイナルドゥムが自陣でボールを失い、ルーズボールに右サイドバックのアーノルドが一発で飛び込んでしまいました。
ここでMFジャンはボールウォッチャーになっており、ウェスト・ブロムウィッチFWのロドリゲスを掴まえることができません。
さらに左サイドバックのモレノの戻りが遅いためにエリア内で広大なスペースが生まれ、そこに持ち運ばれて強烈なシュートを許してしまいました。
このシーンでは、まずDFアーノルドがボールに飛び込まずに相手を遅らせる対応をするべきでしたし、MFジャンもボールでは無く、人を見るべきでした。
DFモレノも相手にボールを奪われた際のポジショニングに難があり、逆サイドにボールがあるときのカバーが遅いです。
1発でボールを奪いにいくデメリット
10分のウェスト・ブロムウィッチの追加点は、MFジャンが一発でボールを奪いに行ってかわされた事が発端です。
簡単にかわされ、左サイドにボールを展開。折り返しのグラウンダーのクロスをいとも簡単に押し込まれてしまいました。
ハイプレス戦術では、素早くボールを奪いに行くため、選手たちはすぐにボールに飛び込みがちです。
しかし、素早くアプローチに行く場面と、プレーを送らせなければいけない場面を見極めなければなりません。
特にアンカーのポジションは抜かれたら危険なポジションですし、相手が前を向いている状況で軽い守備をするのは致命的と言っていいでしょう。
リヴァプールの守備の問題点は?
ここまでリヴァプールの様々な守備の課題を挙げてきましたが、まとめると以下のようになります。
- 両サイドバックの軽い守備
- DFモレノのカバー力不足
- MFジャンのアンカーポジションでの軽い守備
- 取りに行くか遅らせるべきかの判断
1月の移籍市場でDFファン・ダイクを獲得したリヴァプールですが、失点数がまったく減っていないことを見ると、根本的な原因はセンターバック以外にあることがわかります。
特にこの試合では、右サイドバックを攻略されてクロスを入れられた際に、DFモレノのカバーが遅い事が原因でDFファン・ダイクが2人を見なければならないシーンが多々生まれていました。
MFジャンや右サイドバックのDFアーノルドが集中力を欠いたことで軽い守備をしてしまうのは割りといつもの事なので、クロップ監督としてはこの2人をどのように使うべきか考えなければならないでしょう。
守備の改善策は?
では、リヴァプールの守備をどのように改善すべきなのでしょうか。
まずは軽い守備が目立つ両サイドバックですが、右サイドは主にDFアレクサンダー=アーノルドと、DFジョー・ゴメスの若手2人が務めています。
このポジションには主力のDF「ナサニエル・クライン」が復帰すれば大丈夫そうです。
しかし、彼が復帰するまでは代役が必要なので、アレクサンダー=アーノルドを起用する場合の対策を考えてみましょう。
アーノルドのキック精度を活かしつつ守備も重視するなら
アーノルドはフリーキックが上手く、止まっているボールを蹴るのは上手ですが、流れの中からのクロスの精度には難があります。
ウィングの選手が中央にポジションを絞った場合、空いたスペースにはサイドバックが走りこむのがスタンダード。
アーノルドもFWサラーが中央に入った際には空いたスペースに以下の図のように走り込んで行きます。
しかし、アーノルドは前述の通り動いているボールを蹴る精度が悪いため、ミスから逆にカウンターを食らう可能性もあります。
そのため、相手陣地の深い位置まで入っていってクロスを上げるのは、アーノルドの守備能力を考えるとリスキーです。
可能であれば、アーノルドには余裕がある状態(ボールが止まっている状態)でクロスを上げて欲しいもの。
この問題はインサイドハーフの選手が空いたポジションに流れる事で解決できそうです。
上記の図では、FWサラーが絞ったスペースにインサイドハーフのMFチェンバレンが流れています。
アーノルドが上がらないことで守備面のリスクを減らせますし、MFチェンバレンが後方にボールを落とすことで、アーノルドが落ち着いてクロスを上げることが可能になります。
また、チェンバレン自身もクロスが上手いので、チェンバレンがクロスを上げるという選択肢もアリです。
この動きは首位マンチェスター・シティでも頻繁にも見られ、MFデ・ブルイネやMFダビド・シルバがウィングを追い越す動きをしています。
左サイドバックはモレノよりロバートソンの方が安定する
左サイドバックを務めているDFモレノはシーズン序盤こそ安定していたものの、CLのセビージャ戦や今回の試合では悪いプレーが目立っています。
モレノはポジショニングが悪く、センターバックとの連携もイマイチ取れていない印象です。
左サイドバックはポジションを争うDF「アンドリュー・ロバートソン」やベテランのMF「ジェームズ・ミルナー」の方が安定するでしょう。
エムレ・ジャンはアンカーではなく、もっと前で使うべき
エムレ・ジャンはフィジカルが強く、良く走り、一生懸命にボールを奪うことができる選手で、一見中盤の守備的なポジション向きに思えるかもしれません。
しかし、一発で当たりに行く場面と遅らせる場面の判断ができなかったり、集中力を欠くシーンが目立つので、失点に直結するポジションで起用するのは避けたほうが良いでしょう。
個人的には、一列前のインサイドハーフや、最前線のフォワードでも使えると思います。
激しいプレスに豊富な運動量、空中戦の強さ、ボレーシュートの上手さを兼ね備えるMFジャンは明らかにリヴァプールの戦術にフィットするフォワードでしょう。
MFジャンのワントップはぜひ一度クロップ監督にチャレンジしてほしいものです。
まとめ
プレミア下位のクラブに連敗してしまったリヴァプールは、チームの守備面に関して向き合わなければならないでしょう。
正直、コウチーニョの移籍よりも守備の不安定さの方が気になります。
攻撃陣はサラーを中心に奮闘しているので、後は守備さえ改善できれば大化けすると思います。
今後のリヴァプールがどうなっていくのか注目していきましょう。